Session3: ビジネスイベンツが担う復興への道

このセッションでは、入国制限も緩和され、まさに本格的な国際会議の再開に向け動き出そうとしている現状において、少しそれまでの歩みを振り返り、新型コロナ対策のガイドライン策定や入国制限とその緩和をめぐってどのような攻防があったのか、国際的往来の停止はビジネスイベンツ業界のみならず経済界にどのような影響を与えたのか、など、日本とフランスのビジネスイベンツ再開までの歩みが紹介された。

正木 義久氏 / Mr. Yoshihisa Masaki
 (一社)日本経済団体連合会、ソーシャル・コミュニケーション本部長
 Director, Social Communication Bureau, Keidanren (Japan Business  Federation)

 マルタ・ゴメス 氏 / Ms. Marta Gomes
 Viparisセールス&マーケティング副本部長 / ICCA会長
 Deputy Executive Director Sales & Marketing Division Viparis / ICCA President

経団連において、まさに感染症対策のガイドライン作成に関する調整や、入国制限緩和に向けての申し入れを政府に行っていた正木氏は、この間の教訓として、「自分で考えるべし」「異業種と連携すべし」「世界とつながるべし」の3つを挙げ、コロナによる入国制限で日本のファンを追い出している状況では、「安全保障上、著しいマイナスです。経済的には、市場の収縮を止められず、雇用も生み出せません。」と主張。フォーラム開催時、第8波が起こるかという状況で不安も感じられていたが、科学的情報を自ら判断し、コンベンション業界が自ら考えて行動することが問われている、とも。では、コロナ禍を経て、国際的なビジネスイベンツはどうなっていくのか。オンライン会議はタイパがいい、しかしセレンディピティはリアルでしか生まれない。「聴衆が聞きっぱなしの「説明会」は、オンライン会議で、講師の熱量を伝えたい講演、ディスカッションをする会議はリアル会議で」と、それぞれふさわしい手段を講じることが肝要。

それとともに、セレンディピティを生むような仕掛けをどうやって作るのか。偶然の幸運を引き寄せる人は、好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、冒険心を持っているそう。思い描いた通りにすべて進むわけではないが、常にオープンマインドで、行動を起こすこと=Planned happenstanceが、そうした幸運を呼ぶカギになる、とのメッセージが、参加者に伝えられた。

いっぽう、Viparis(パリ市内の10の会議・展示センターを管理する)のマルタ氏は、2020年3月に始まったロックダウンから、制限をかけながらも6月のビジネスイベント再開、その後の回復への過程を紹介。ワクチンパスなどEU諸国とのコンセンサスと整合性が取れ始めた頃に、ビジネスイベンツ再開に向けた政府との交渉が本格的に進んだ。2021年には5月以降に予定していたすべての医学会議の主催者に連絡を取り、医学教育の継続、知識やベストプラクティスの共有、若い医師が研究の最新動向や新しい治療法を学ぶための機会としての会議の重要性を説明する共同レターを集めたとのこと。

大方の会議がハイブリッドで行われた2021年に対し2022年はリアルの会議が戻ってきた。そのなかでキーワードになるのは、レガシー、公平性と包括性、そしてサステナビリティであることが主張され、2022年10月に、100ヵ国から9000人超の参加者を集めて行われた国際宇宙航行連盟(IAF)会議の例が紹介された。Space for @ll との合言葉のもと、宇宙に関する活動がすべての人にとって有益であることが示されたこの会議で、参加者の45%を占めたのは次世代だった。展示の廃棄物を減らす取り組みや、地産地消の食事を提供するなどのことも行われた。なによりパブリックデーには2200人以上の一般参加者が集まり、宇宙で活躍する著名人による特別講演や、各国の宇宙機関のブースを見て回った。

写真と共に伝えられた会議の様子は、コロナ禍の状況とは思えず、日本との対照的な状況も感じられたプレゼンテーションだった。