国際会議とともにあるグローバル・コミュニティ

YGMF Vol.3_オープニング・キーノート「国際会議とともにあるグローバル・コミュニティ ~ ACM CHI 2021 Online の開催経験」
Global Community with International Conferences - Experience of Organizing ACM CHI 2021 Online

北村 喜文 教授 / Dr. Yoshifumi Kitamura
東北大学 電気通信研究所 教授・副所長 / ACM CHI 2021 General Chair
Deputy Director and Professor, Research Institute of Electrical Communication, Tohoku University / ACM CHI 2021 General Chair

 

CHI 2021(カイと読みます。コンピューター・ヒューマン・インターラクションの分野の最大の会議)は、39回目にして初めて日本で開催されるはずでしたが、完全オンラインでの実施に。 そのGeneral Chairを務めた北村教授より、CHI2021主催のご経験を、会議におけるアクセシビリティやインクルージョンの観点から伺いました。

今後、従来的なフィジカル・アクセシビリティに加え、バーチャルな面でのアクセシビリティも見過ごせないこと、CHIにおける「グローバル・コミュニティ」を形成のため、多様性・包摂性が根本的な取り組みとなっていることなどに言及されました。


❝CHI2021はオンライン上で5000名を集める会議となった。計画の途中ではハイブリッドでの開催も視野に入れ、また今後ハイブリッド開催が主流になっていくことも鑑みて、Hybrid Conference Advisory Groupを設置し、ハイブリッドで開催される際の課題を検討した。その検討事項は、フルオンラインに変更となっても引き継がれたが、24時間プログラムもその一つ。世界中の参加者が平等に参加できるように、発表は2回ずつ(ライブ発表とその録画)ストリーミングし、Q&Aのみいずれもライブで実施するというものである。オンライン・ストリーミング上にはASLの手話通訳や自動生成のクローズドキャプションを表示、トランスクリプションは別途URLでも用意した。


CHIは、ヒトと機械の関係を良くするための技術の提案、またその技術が社会にどのような効果や影響を与えるのかを研究する分野であるので、必然的に「ヒト」の背景、多様性にも敏感な会議である。それゆえDiversity, Inclusionなどを研究テーマとして扱っているメンバーもいる。「誰もが安全に参加できるインクルーシブでアクセシブルな会議」をCHI2021の基本姿勢とし、現地視察の際にも多くの時間をAll gender restroomや車椅子でのアクセスなど、細かな確認に費やした。これは、主催であるACMが掲げる「ACM Accessible Statement」の姿勢に準ずる。ACMの専門グループの一つであるSIG Accessは「Accessible Conference Guide」を発行し、Accessibility Chairの役割やウェブサイトや論文投稿の場面、ロケーション・会場選定に関するアクセシビリティについても言及している。特にCHI2021においては、従来のフィジカル・アクセシビリティに加えオンライン・イベントでのアクセシビリティ(ウェブコンテンツ、発表、ボランティアへのトレーニング、)への配慮も必要になったが、この後ハイブリッドが周流となるとすれば、これらすべての項目をクリアしなければならない。


CHIにはグローバルコミュニティ・チェアも設けられ、初参加者をメンターするイベントやAllyshipのイントロダクション・プログラム、従来Diversity&Inclusionについて話し合う機会であったランチをオンライン上に展開したBLInnerクッキングクラスなどが実施された。
オンライン化によって経費が3分の1ほどに縮小されたため、全体的に登録料を見直し、途上国からの参加者にはその経済状況により段階的にさらに安価な登録費を設定し参加を促進した。それがランク付けにならないように、C/H/Iというカテゴリー名をつけた。学生への奨学金などもある。


ACMではハラスメントポリシーも、もちろん設けられ、オープニングイベントで参加者に共有するよう促されている❞


最後には「SIGCHIが主催する会議は24ある、しかし日本で開催実績のあるのはたった9つ。日本未開催の会議をぜひ招致したい」との力強い言葉もありました。